最愛のあの人へあなたが残す最後のメッセージ。
それが「遺言」です。

遺言は一般的に「ゆいごん」と言われ、死後に残る自分の財産を誰にどうやって分配するか等を書き記すものです。遺言がだいたいどのようなものかは、多くの方がイメージできると思います。しかし、実際には民法によっていろいろな決まりごとがあり、法律の形式に従って正しく作成しなければ、その遺言は無効になってしまったりします。このことは、案外知られていません。

ここでは、法律に則った遺言書の種類、書き方、メリット等を説明していきます。最近では公正証書遺言を作成する方が増加傾向にあります。公正証書遺言は遺言の実効性をより確実にするために最適な遺言方法です。

遺言のメリット

生前に遺言書を作っておくといったいどんなメリットがあるのか?遺言書のメリットについて説明していきたいと思います。一般の方は、なかなか遺言書の効力について把握していないように思いますが、遺言作成のメリットについては、生前にきちんと把握しておきたいものです。後のトラブルを避けるためにも、遺言は大変有効な生前対策と言えます。それでは遺言書を作成しておく最大のメリットを2つ挙げたい思います。

遺産分割協議

法定相続人による遺産分割協議が不要になる遺言がない場合、原則として亡くなった方の相続人が遺産相続に関して協議を行い、協議が整えば、遺産分割が行われます。この遺産分割協議で一番大変なことは、相続人全員の足並みを揃えることです。一人でも不同意な者がいれば、骨肉の争いとなり、いわゆる遺産相続争いにつながりかねません。遺産相続で、争いになってしまう多くのケースが、「私と私の子どもには、遺言書なんて必要ない」と安易に考えて、遺言書を残さなかった方の場合に多くみられるのが、残念ながら実情です。

自分の死後、残される財産に関して相続人にどのように遺産分けをして欲しいかを明確に書きとめておけば、こうした遺産相続争いを防ぐことができます。これは先に去るものの責任のようにも思います。相続争いは、自分の子供以外にも、子供の配偶者やその両親、または相続人となった自分の兄弟やその関係者など、様々な人間関係が絡んできてしまうのが、その複雑たるゆえんです。ですから、遺言書は、親族の全員の平穏を導く保険とも言えると思います。

自分の好きなように財産を分けたい

自分の好きなように遺産分割をして欲しい場合、遺言書を作成し、充分な生前対策を行う必要があります。これがしっかりと出来ていれば、あらかた自分の好きなように財産を相続させることができます。

  • 「配偶者である妻に、全部相続させたい」
  • 「法定相続人以外のお世話になった人に財産を譲りたい」
  • 「このひとには、他の相続人よりも多めに相続させてあげたい」
  • 「会社の事業承継の方針を明確にして、従業員の雇用を守りたい」

などです。このほか、認知していない子を遺言により認知するという身分行為も遺言を使って実現できます。これらは、大きなメリットであると思います。ただし、相続人の遺留分について考慮しなけれ、後にトラブルを引き起こすきっかけになってしまうこともあります。遺言を書く場合は、千葉相続遺言相談窓口へお気軽にご相談下さい。

遺言の執行

遺言の執行についてご説明いたします。遺言の検認が終わると、いよいよ遺言内容を実現させることになります。

遺言書を実現するにはさまざまな手続きがあり、遺言ではそれを執行する遺言執行者を指定できることになっています。遺言執行者は必ずしも指定しておくものではありませんが、登記の申請や引渡しの手続き、不動産を遺贈するなど、遺言執行者がいなければ実現に手間がかかる事が沢山あります。遺言ではそうした遺言執行者を指定したり、第三者に指定を委託したりすることができるのです。遺言執行者の指定は遺言の中だけで認められていて、生前の取り決めは無効になります。職務が複雑になると予想される時は、遺言執行者を複数名指定しておくことも可能です。また、遺言で指定を受けた人が遺言執行者を辞退することも認められています。遺言に指定がなかったときは、相続人や利害関係人が家庭裁判所で選任の請求を行います。

遺言の実行手順

遺言者の財産目録を作る

財産を証明する登記簿、権利書などをそろえて財産目録を作り、相続人に提示します。

相続人の相続割合、遺産の分配を実行する遺言に沿った相続割合の指定

相続人の相続割合、遺産の分配を実行する遺言に沿った相続割合の指定をして、実際に遺産を分配します。また、登記申請や金銭の取立てをします。

相続財産の不法占有者に対して明け渡しや、移転の請求をする。

遺産を引き渡し

遺贈受遺者に遺産を引き渡す相続人以外に財産を遺贈したいという希望が遺言書にある場合は、その配分・指定にしたがって遺産を引き渡します。この際、所有権移転の登記申請も行います。

戸籍の届出

認知の届出をする認知の遺言があるときは、戸籍の届出をします。

相続人廃除、廃除の取り消しを家庭裁判所に申し立てる

遺言執行者はこのような職務をこなしていかなければなりません。調査、執行内容は相続人に報告していく義務がありますが、執行が済むまではすべての財産の持ち出しを差し止める権限を持っています。相続人は、遺言執行の職務を終了したとき、それに応じたの報酬を遺言執行者に支払います。その報酬額は遺言でも指定できますが、家庭裁判所で定めることもできます。

遺言書作成時の財産調査

遺言書の作成時に意外に見落としがちであるのが財産調査です。

遺言書を検認してみると、ときどき財産がすべて記載されていないため、記載されていない財産はどのように分けるのか、協議になることがあります。もちろん、明確に決められていないので、通常であれば法定分割に従う場合が多いのですが、遺言者の意思は本当はどうだったのでしょうか。

遺言書作成時に注意すべき点を下記にあげてみたいと思います。

遺言作成時に注意すべき点と財産調査

  • 生命保険金の受取人が誰になっているのか→受取人によっては相続財産になります。→相続税の対象にもなります。→相続財産と、みなし相続財産のバランスを確認する必要があります。
  • 不動産評価の確認→広いだけで価値があるのか、収益物件となるのか。相続人にとって価値があるか。→売却できるのか、売却しやすいように対策がしてあるか。→抵当権、定期借地権、底地権など権利関係のある土地ではないか。→農地・生産緑地など、相続しても扱いづらい土地ではないか。
  • 財産の種類と総額の把握→金融機関ごとの残高がいくらになっているのか。→株式や金融資産の評価はいくらなのか。→財産の総額はどうなるのか。
  • 税金対策の確認→相続税対策と、納税資金対策が出来ているか。→土地を生前に売却しやすくしておくなど、税金を考えた生前対策が出来ているか。→固定資産税を考えた分割の割合となっているか。

遺言書の作成時の財産調査は、遺言の目的を実現するうえでも、非常に重要となります。遺言には、様々な役割がありますので、作成する前にしっかりと財産調査を行い、より効果的に活用いただくことをお勧め致します。

まずは、千葉相続遺言相談窓口にお気軽にご相談ください。

3種類の遺言について

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者本人が全文・日付・氏名を自筆で書き、捺印して作成します。自筆証書遺言は、必ず自分で書かなくてはなりません。用紙については、何でも構いませんが、ワープロ文字や代筆は認められません。

以下に、自筆証書遺言のメリット・デメリットについてまとめました。

自筆証書遺言のメリット

  • 費用が掛かからず手軽
  • 遺言内容の秘密が確保できる
  • 遺言したこと自体を秘密にできる

自筆証書遺言のデメリット

  • 遺言者にとっては遺言内容の実現が不確実
    (遺言の存在が見つからなかったり、見つかっても破棄されたるおそれがある)
  • 遺族は家庭裁判所の検認が必要
  • 検認を経ないで遺言を執行すると、5万円以下の過料に処せられる

自筆証書遺言の法改正については下記を参照ください。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00240.html
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

公正証書遺言

公正証書遺言は、本人が公証役場に出向き、証人2人以上の立会いのもとで、遺言の内容を話し、公証人が筆記します。

そして公証人は、記録した文章を本人と証人に読み聞かせたり、閲覧させたりして筆記の正確さを確認し、それぞれの署名・捺印を求めます。これに、公正証書遺言の形式に従って作成した旨を公証人が記載し、最後に公証人が封紙に日付と共に記録し、本人と証人と共に署名捺印して作成します。

なお、言葉の不自由な人や耳の不自由な人の場合は、本人の意思を伝えることのできる通訳を介して遺言を作成することができます。

このほか、相続人になる可能性のある人(推定相続人)、直系血族、未成年者、受遺者などは、公証人役場での証人になることはできません。

以下に、公正証書遺言のメリット・デメリットについてまとめました。

公正証書遺言のメリット

  • あらかじめ公証人により違法や無効がないことがチェックされているため、最も確実に遺言を残すことが出来る
  • 開封時の家庭裁判所の検認が不要(手続きや費用が浮く)
  • 遺産分割協議が不要
  • 遺産分割協議が不要

公正証書遺言のデメリット

  • 費用が掛かる(公証人手数料)
  • 内容を公証人と2人の証人(計3人の他人)にも一時的に公開される※もちろん、証人にも守秘義務が求められます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、公正証書遺言と同じように公証役場で作成するのですが、遺言書の内容を密封して、証人も内容を確認できないところが、その相違点です。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、作成時点でその内容を本人以外に知られることがなく、プライバシーを守ることができますが、本人の死後に家庭裁判所で検認の手続きが必要となります。

※検認の必要がないのは、公正証書遺言の場合だけです。

以下に、秘密証書遺言のメリット・デメリットについてまとめました。

秘密証書遺言のメリット

  • 遺言内容の秘密を確保できる

秘密証書遺言のデメリット

  • 費用が掛かる
  • 開封時、遺族は家庭裁判所の検認が必要
  • 検認を経ないで遺言を執行すると5万円以下の過料に処せられる
  • 遺言を遺したこと自体は、公証人と2人の証人(計3人の他人)に知られる
  • 遺言の内容によっては、専門家のチェックを経ていないので相続人間での紛争を引き起こしてしまう可能性もある

遺言を遺しておいた方が望ましいと思われる方

専門家の立場から、特に遺言を遺しておいた方が望ましいと思われる方は、下記のような方です。

現在、何かしらの事業を運営されている方
相続による遺産分割が相続人間でうまくいかず、会社の財産がバラバラになり、会社が継続出来なくなってしまい、従業員の方に迷惑を掛ける事もあります。
特定の相続人にのみ財産を相続させたい方
以前に生前贈与を活用した方が良いのか、含めて検討が必要です。また単に特定の相続人にのみ相続させるとしても、遺産相続の紛争が起こってしまっては、遺言も効力を発揮しません。この点においては、事前に相続人や相続財産、遺留分などについて確認しておく必要があります。