相続

包括遺贈(ほうかついぞう)

包括遺贈とは包括して遺贈をすることです。

包括してというのは、ある人の持っている権利を一括でまとめて、という意味です。

遺贈というのは遺言で財産を譲与すること、つまり包括遺贈というのは、ある人が遺言で自分の持っている権利の一切合財をまとめてある人に与える意思表示をすることをいいます。

包括遺贈の対立概念は特定遺贈です。特定遺贈とは財産を特定して遺贈することです。

包括遺贈の遺言書の文言の例は次のようになります。

  • 全財産を包括遺贈する場合、遺言者は受遺者に対し全財産を包括して遺贈する
  • 遺産の割合的一部を遺贈する場合、遺言者は,受遺者に対し,遺産の3分の1を遺贈する

年金受給権(ねんきんじゅきゅうけん)

遺族年金の受給

年金受給権(ねんきんじゅきゅうけん)とは年金受給権とは年金制度の被保険者や加入者の遺族が遺族年金等を受け取ることができる権利のことをいいます。

遺族給付の種類

年金加入者が亡くなったとき、遺族へ給付される年金の種類として、国民年金では以下の3つがあります。

  1. 遺族基礎年金
  2. 寡婦年金
  3. 死亡一時金

また厚生年金、共済年金では以下の2つがあります。

  1. 遺族厚生年金、遺族共済年金
  2. 遺族基礎年金

国民年金、厚生年金、共済年金の加入者で被保険者期間の3分の2以上の期間、保険料を納めていた人が亡くなった場合、遺族に対して上記の給付がされます。

遺族給付の要件

遺族に対する年金の給付要件は、年金加入者あるいは受給者が以下のような状況で死亡したときです。

  1. 勤労している加入者が死亡したとき
  2. 仕事中の傷病が原因で5年以内に死亡したとき
  3. 老齢年金を受給していたか、受給資格のあるとき
  4. 1級か2級の障害給付を受けていたとき

遺族基礎年金、遺族厚生年金、遺族共済年金

国民年金、厚生年金、共済年金の加入者、老齢年金の受給者が死亡したとき、死亡した人の子が18歳の年度末(高校卒業年齢未満)であれば、その遺族(妻あるいは子)に対し、遺族基礎年金が支給されます。

これらの遺族でも受給するには次の条件が定められています。

  • 年収800万円以上の収入が将来にわたってないこと
  • 内縁関係も含む
  • 認知された子も含む
  • 妻が遺族基礎年金を受けている間、子に対する支給は停止される

厚生年金、共済年金に加入していた故人の遺族には、遺族基礎年金に遺族厚生年金、遺族共済年金がプラスされます。

遺族年金の請求方法

請求人

  • 年金加入者、年金受給者の遺族

請求先

  • 住所地の社会保険事務所(年金受給者死亡のとき)
  • 勤務先の社会保険事務所(厚生年金・共済年金加入者の死亡のとき)
  • 市区町村の役所(国民年金加入者の死亡のとき)

請求書類

  • 国民年金 厚生年金保険 船員保険遺族給付裁定請求書 年金手帳 戸籍抄本 死亡証明書 銀行通帳 印鑑

法定相続人(ほうていそうぞくにん)

法定相続人について

法定相続人とは、民法で定められた相続人をいいます。
相続人とは、相続する人、つまり、相続によって財産を譲り受ける人のことです。
被相続人(相続によって財産を譲り渡す人)が遺言をしていない場合、被相続人の一切の権利義務が、民法の定めに従って相続人に包括的に承継されることになります。

法定相続人の範囲

配偶者

被相続人の配偶者は、常に相続人になります(民法890条)。
ここでいう「配偶者」は、法律上の婚姻関係がある者をいい、内縁関係は含まれません。

血族相続人

配偶者以外に相続人になる者として、血族相続人があげられます。
被相続人と血のつながりがある相続人という意味ですが、血のつながりのない養親子関係も含まれます。
血族相続人については、大きく分けて3通りあり、次の優先順位で相続権が回ってきます。

  1. 子及びその代襲者
  2. 直系尊属(親、祖父母等)
  3. 兄弟姉妹及びその代襲者

子及びその代襲者等

被相続人の子は、相続人になります(887条1項)。
先ほども述べたとおり、実子であっても養子であっても変わりありません。
また、被相続人の子が相続開始以前(被相続人の死亡以前)に死亡したり、欠格事由や廃除(後述)によって相続権を失ったりした場合、相続人の子が相続人となります(887条2項)。これを代襲相続といいます。
代襲者が相続開始以前に死亡したり相続権を失ったりした場合、代襲者の子が相続人となります(887条3項)。

直系尊属

子及びその代襲者で相続人になる者がいない場合、直系尊属(父母、祖父母、のように直通する系統の親族で先の世代の者)が相続人になります(889条1項1号)。
親等の異なる者の間では、近い者が優先されます。

兄弟姉妹及びその代襲者

直系尊属もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります(889条1項2号)。
相続開始以前に兄弟姉妹が死亡や相続権を失った場合には、兄弟姉妹の子が相続人になりますが、相続開始以前に兄弟姉妹の子も死亡や相続権を失った場合には、その子は相続人にはなりません(889条2項)。

相続人にならない場合

例外的に次の場合には相続人になりません。

  • 相続放棄
    相続放棄をした場合、その相続に関しては、最初から相続人にはならなかったものとみなされます(939条)。
  • 欠格事由に該当する場合
    民法が定める一定の事由(欠格事由)に該当する場合、相続人となることができません(891条)。
  • 推定相続人の廃除
    遺留分を有する推定相続人(相続人となるべき者)が、被相続人に対し、虐待をしたときや、推定相続人に著しい非行があったときは、家庭裁判所に推定相続人の廃除(相続権をはく奪すること)を請求することができます(892条)。

生前贈与(せいぜんぞうよ)

生前贈与(せいぜんぞうよ)とは、ある人が自分の死亡(=相続開始)を待たず、生前に相続人などに財産を与えること。節税目的で行われることもある。

生前贈与は、相続税対策を目的として利用されることが一般的です。

これまでの相続税の非課税枠(基礎控除額)は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」とされていました。しかし、平成25年度税制改正により、相続税法が改正され、平成27年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税については、この基礎控除額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となり、従来であれば相続税がかからないような方でも、相続税がかかる可能性が高くなりました。

適切に生前贈与を選択すれば、贈与した財産の分だけ、原則として相続税がかかる財産が減り、相続税を軽減させることができます。

また、相続財産の分け方を生前に決定できるため、相続人同士の紛争防止やご家族の相続手続き時の負担軽減など、様々な効果も期待できます。

生前贈与の注意点

  1. 必ず贈与の証拠を書面に残す

    贈与の合意は必ず書面で残すようにしましょう。
    贈与を書面で残しておかなければ、後日相続が発生した際、相続人等から契約の成立について争われたときにその主張・立証できず、契約が否定されてしまう可能性があります。
    また、税務調査で贈与の証明ができないと贈与が否認されるといったケースもあるようです。
    親族間の贈与であればあるほど、書面に残すことをおろそかにしがちです。法律的にも税務的にもリスクが伴いますので、必ず贈与契約書を作成するようにしましょう。

  2. 贈与税の対策は慎重に行う

    個人から個人へ財産を贈与する際には、受け取った人に原則贈与税が課税されます。
    贈与税が課税される場合には、贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までの間に確定申告と納税を完了させなければなりません。
    また、相続税を減らそうと生前贈与によって一気に財産を減らしてしまうと、多額の贈与税がかかる場合もあり、逆に税負担が増大してしまうことがありますので、毎年少しずつ贈与したり、1人に対してではなく複数人に対して贈与するなどの工夫が大切です。

  3. 相続発生前3年間の贈与は相続税の課税価格に加算される場合がある

    親子間で贈与を検討している場合には、早めの着手が望ましいと言えます。
    例えば、父親の体調が思わしくない状態となったので、急いで子どもに財産を贈与するとします。その贈与が、父親が亡くなる3年前までになされたものである場合、贈与そのものは成立するのですが、相続税の計算上はその贈与がなかったものとして、相続税が課税されます。この制度は「生前贈与加算」と呼ばれ、近い将来に相続が発生することを予想して、相続直前になってからの不当な相続税逃れを防止するためにできた制度です。これにひっかかってしまうと、相続税の軽減のために行った贈与は無意味なものとなってしまいますので、注意が必要です。

  4. 遺留分には要注意

    生前贈与をするときは、遺留分にも注意を払う必要があります(詳細については遺留分をご覧ください)。民法では、相続開始前1年間にした贈与は、遺留分減殺請求の対象になります(民法第1030条)。また、相続開始の1年以上前にした贈与であっても、場合によってはその対象になってしまいます。
    生前贈与をするときは、将来の争いにならないよう、遺留分を十分考慮した上で、家族に自分の意志を伝えておくなどの配慮が大切です。
    遺留分についてはこちら

普通養子(ふつうようし)

普通養子(ふつうようし)とは、実子ではない者を法律上の子供として戸籍の届出を行い、養親子関係を築く制度。特別養子とは異なり必ずしも幼少時に行う必要はないが、養子の年齢によっては家庭裁判所の許可が必要になることもある。

普通養子縁組

養親との間に親子関係が成立しますが実親との親子関係が解消されることはありません。そのため,養子は2組の親を持つことになり実親または養親どちらが亡くなった時でも遺産相続権を持つことが出来ます。また養親が扶養できなくなった場合は実親が扶養することができます。

婿養子や,相続を考えて孫を養子にするケースは普通養子になります。

条件は下記となります。

  1. 未成年者を養子にする場合は原則,家庭裁判所の許可が必要
  2. 養子になる子が15歳未満の場合は実親の承諾が必要
  3. 養親より年長者を養子にすることや,叔父(伯父)叔母(伯母)を含めた尊属を養子にすることはできない

法定相続分(ほうていそうぞくぶん)

法定相続分(ほうていそうぞくぶん)とは、法律によって定められた相続人の相続分のことをいいいます。
被相続人が遺言によって相続分について何ら意思表示をしなかったときには、相続人間で遺産分割の協議を行わない限り、法定相続分にしたがって相続がなされることになります。

なお、法定相続分はあくまでも目安であり、法定相続人間で合意がある場合には、これとは異なる分割をすることも可能です。また、被相続人が遺産分割の方法を指定した遺言等を残している場合には、その内容が優先されます。

法定相続人の範囲と相続順位

原則として①配偶者は存命であれば常に相続人となり、②それ以外の相続人については優先順位が決まっていて、第1順位が子、第2順位が親(親が亡くなっている場合は祖父母、曾祖父母と生きている限り遡る)、 第3順位が兄弟姉妹。第1順位がいれば、第2順位は相続せず、第1順位がいない場合に第2順位が、それもいなければ第3順位の者が相続人となります。

法定相続人を確定する方法

法定相続人を確定するためには,被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍)の取得が必要となります。戸籍は、本籍地の市区町村役場で取得しますが、本籍地の役所が遠方にある場合には、郵送による請求も可能です。

法定相続分

相続分とは、相続人の受ける相続財産の割合のことです。遺言による相続分を「指定相続分」というのに対し、遺言がない場合に適用されるのが法律による割合である「法定相続分」です。 法定相続の割合は以下のようになります。

配偶者と子どもがいる場合

配偶者と子とで財産を分ける場合は配偶者が1/2、子が1/2。子が複数いるときは、子の相続分(1/2)を等分します。

(例)子が2人の場合
1/4ずつとなります。
なお、配偶者が既に亡くなっている場合には、子のみが相続人となります。

子はいないが、親がいる場合

配偶者と親とで財産を分ける場合は配偶者が2/3、親が1/3。父母が健在の場合は1/3を等分します(父親=1/6、母親=1/6)。
なお、父母が二人とも亡くなっている場合は、祖父母(父方の祖父母・母方の祖父母)が相続人となります。

子は死亡しているが、孫がいる場合

子が既に亡くなっているが、その子に子(被相続人からすれば孫)がいる場合は、その孫が子に代わって相続人となります。なお、その孫が亡くなっている場合は、曾孫が相続人となり孫の相続分を曾孫が引き継ぐことになります。これを代襲相続といいます。

子・親ともいない場合

兄弟姉妹がいる場合は配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4。兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は、その子が代襲相続人となります。

未成年者控除(みせいねんしゃこうじょ)

相続税の未成年者控除について

未成年者控除(みせいねんしゃこうじょ)とは、相続人が20歳未満の未成年者である場合、相続税額から一定の金額を差し引くことができる制度。
遺産額から控除される基礎控除などとは違い相続税額から直接控除されるため、相続財産の額によっては全額控除されることもあり得ます。

未成年者控除の適用条件

未成年者控除を活用するためには、次の4つの要件を全て満たなくてはいけません。

  • 相続や遺贈で財産を取得している
  • 居住無制限納税義務者又は非居住無制限納税義務者である
  • 相続や遺贈で財産を取得したときに20歳未満である
  • 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人である

居住無制限納税義務者とは、相続時に日本に居住していた者です。

非居住無制限納税義務者とは、相続人が日本国籍を持っており、海外に在住している場合です。

相続人と被相続人両方が、10年超に渡り海外に住んでいるかがポイントで、いずれかが海外居住10年以下の場合は、「無制限納税義務者」に該当します。

未成年者控除の控除額

(20歳 ー 相続した時の年齢)× 10万円

未成年者の年齢は満年齢で計算され、1年未満の期間は切り捨てます。例えば、15歳5ヶ月の場合は15歳、18歳11ヶ月は18歳となります。未成年者の年齢が低いほど控除額は大きくなり、相続税は安くなります。

未成年者控除の必要書類

未成年者控除を利用するためには、通常の申告書類の他に相続税申告書の第6表「未成年者控除・障害者控除額の計算書」が必要になります。この計算書に未成年者控除の金額を記載して税務署へ提出します。

未成年は相続の権利はありますが、特別代理人がいなければ相続の手続きが行なえません。そのため、誰が代理人かを表す「特別代理人選任の審判の証明書」も合わせて提出します

利益相反行為に該当する場合は特別代理人が必要

未成年者が相続人になる場合には、未成年者の代わりに手続きをする代理人を選定しなければいけません。

特別代理人にふさわしい人

特別代理人は家庭裁判所によって選任された代理人のことを指します。代理される者との間に利益相反関係がなければ誰でも特別代理人になることができます。そのため、相続の場合、同じ被相続人の相続人でなければ親族であっても問題ありません。

特別代理人の選任に必要な書類

特別代理人を選任する際には次のような書類を揃えて提出します。

  • 特別代理人選任申立書
  • 未成年者の戸籍謄本
  • 親権者(または未成年後見人)の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票
  • 利益相反に関する資料

みなし相続財産(みなしそうぞくざいさん)

みなし相続財産(みなしそうぞくざいさん)とは、被相続人が死亡したときに所有している財産ではではありませんが、相続税の計算上、財産とみなされるもののことで、「相続財産ではないのに相続税に課税されてしまう」ことをいいます。例えば生命保険金や死亡退職金などがあげられます。

代表的なみなし相続財産

生命保険金

被相続人の死亡により相続人が生命保険金を受け取る場合であって、その生命保険金の保険料を被相続人が負担していた場合には、実質的に被相続人の財産が死亡によって相続人に移転したといってよく、なんら相続による移転と変わりないので相続税法上では相続財産とみなされます。(相続税法3条1項の1)
※保険料負担者や受取人によっては相続税ではなく贈与税又は所得税の対象となる場合があります。

死亡退職金

被相続人の退職金等が死亡により相続人等に支給された場合は、その支給が死亡後3年以内に確定した退職金等なら、それは相続又は遺贈により取得したものとみなされます。お金に限らず物や権利でも変わりありません。(相続税法3条1項の2)
なお、3年以内に確定しなかったものは所得税の対象となります。

死亡退職金は相続人等に直接支給されるもので被相続人の死亡により被相続人から相続人等に対して移転するものではありませんが、退職金自体元々は被相続人が将来退職時に取得する財産であり実質的には被相続人の死亡により相続人等に移転したものと言ってよく相続税法上は相続財産とみなされます。

埋葬料(まいそうりょう)

埋葬料(まいそうりょう)とは、協会けんぽなどの加入者が亡くなった場合に支給される金銭。

物納(ぶつのう)

物納(ぶつのう)とは、相続税を現金で納付することができない場合、一定の要件を満たし、税務署の許可を受けて土地などの現物で納付する制度。