遺産相続をするときには、トラブルが起こりがちなので、事前に準備をしておく必要があります。また、相続の対象財産や、相続の手続きの流れを知っておかないと、スムーズに相続することができません。

そこで今回は、相続のルールと手続きの流れがわかる、遺産相続の基礎知識をまとめて解説します。

相続とは

遺産相続(相続)とは、分かりやすく説明すると人の遺産を次の世代に受け継がせることを指します。

日本では私有財産が認められていますが、所有者が亡くなったらその財産を所有する人がいなくなってしまうので、誰かがそれを受け継ぐ必要があるのです。

所有者が死亡した財産をすべて国有化することは出来ませんし、場合によっては死亡した人が借金をしていることもあります。

そうした場合、債権者が誰にも請求ができなくなるのは不合理ですので、これらの相続財産を次の世代に受け継がせることにより、私有財産性を維持し、取引の安全をはかることができるのです。

相続前に押さえておきたい4つのポイント

相続は私たちが社会で生きていくために重要な制度ですが、一生のうちにそう何度もあることではありません。トラブルを起こさずにスムーズに手続きをするためには、どのようなことに注意したら良いのでしょうか?

相続財産はなに?

まずは、何が相続財産になるのかが重要です。相続財産とは、相続の対象になる遺産のことです。相続財産というと、一般的には現金や預貯金、不動産などだと思われていますが、それ以外にも借金などの負債や権利なども対象となります。反対に、相続されると思われているけれども、実は相続財産にならない財産や権利もあります。

何が相続財産になり、ならないのかについて正確に理解しておかないと、適切に相続手続きを進めることができないので、まずは「相続財産」の内容を押さえておきましょう。

誰が受け継ぐの?

次に、遺産を「誰が受け継ぐのか」も非常に重要です。相続財産が決まっても、誰が相続するのかが決まらないと、財産が宙に浮いた状態になってしまいます。もともとの相続人とは異なる人に遺産を渡したいケースもあり、その場合には遺言書が必要になりますし、誰も相続しない場合に最終的に遺産がどうなるのかも問題です。

また、遺産に借金があると、自分が相続人になっていても相続したくないケースもあり、その場合の対処方法も知っておく必要があります。

分配の割合はどうするのか?

相続財産と相続人が決定したら、次は遺産の分配割合を決める必要があります。

遺産の分配割合は、基本的に民法によって定められています。民法では、各ケースに応じて、法定相続人と法定相続分が定められているので、相続が起こった場合には、その割合に応じて遺産を分配するのです。これと異なる割合で遺産を分配したい場合には、遺言書を残しておく必要があります。また、相続人同士が話し合いによって法定相続分と異なる割合で遺産を分配することも可能です。

相続税を払えるか?

遺産相続をするとき、相続税についても忘れてはいけません。特に近年相続税の基礎控除が大きく引き下げられたことにより、相続税を支払わなければならない家庭が増えています。たとえば、都市部に自宅や土地があると、不動産の評価額が高額になるために、思ってもみなかったような高額な相続税が突然課税されることもあり、こうしたとき、相続税を支払うだけの現金がないため、支払ができなくなって税務署から督促をされたり、泣く泣く土地建物を売却しなければならなくなったりすることもあります。

そのようなことを避けるためには、事前に相続税対策をしておくことが重要です。

相続の対象となる財産

遺産相続をするときには、まずは相続財産が重要ですから、以下で、具体的に相続財産になる財産とならない財産について、見てみましょう。

プラスの資産

相続財産になるものとしては、プラスの資産が代表的です。これは、現金や預貯金、不動産や投資信託、株、貴金属や骨董品、ゴルフ会員権などの資産です。遺産の中でも最もわかりやすいでしょう。

相続財産の評価時期は?

プラスの資産で問題になるのは、評価方法です。現金や預貯金などの場合には評価方法が問題になることは少ないですが、不動産や株などの価格が変化するものについては、いつの時点で評価を行うかが問題になります。

相続財産の評価時は、遺産分割と相続税の場合とで異なります。遺産分割をする場合には、遺産分割時の評価となりますが、相続税の計算の場合には、相続発生時が基準となります。

不動産の評価方法も問題になる

また、不動産の場合には、そもそもどのような評価方法を使うべきかも問題となります。不動産の評価方法には、路線価と固定資産評価額、実勢価格と公示地価の4種類があるからです。これらについても、遺産分割の場面と相続税支払いの場面で、取扱が異なります。遺産分割の場面では、一般的に実勢価格を利用しますが、相続税の計算の際には相続税路線価という評価方法を使います。

このように、ひと言で「プラスの資産」とは言っても、実際に相続するときにはいろいろな問題があります。

マイナスの負債

相続財産となるのは、プラスの資産とは限りません。借金などのマイナスの負債も相続の対象になってしまいます。このことは、一般にはあまり意識されていないことがあるため、注意が必要です。

たとえば、生前に接触のなかった兄弟が亡くなった場合で、その兄弟がサラ金から借金をしていたら、ある日突然サラ金から督促が来ることもあります。死亡者に子供も親もいなければ、兄弟姉妹が相続人になってしまうためです。こうした場合、「相続放棄」という手続きをしないと、自分がサラ金に支払をしなければならないので、大変な目に遭います。

また、相続の対象になる負債は、借金だけではありません。未払の家賃や買掛金などの他の種類の負債がある場合にも、相続の対象になります。父親が事業を営んでいて多額の負債がある場合などには、相続の際に特に注意が必要です。

権利義務

相続の対象になるのは、お金や借金のような目に見えるものだけではありません。抽象的な権利義務も相続されます。たとえば、亡くなった人がアパートを借りて住んでいたら、大家との間で賃貸借契約をしていますが、その賃借人の地位は、相続人に相続されますので、賃貸借契約を解約しないかぎり、相続人は大家に家賃を支払わなければなりません。解約の際、原状回復が必要であれば、その分の費用も支払う必要がありますし、亡くなった人の荷物を片付ける必要もあります。

また、被相続人が誰かの借金を保証していた場合には、保証人の地位も相続の対象になるため、借金した本人が支払をしないときには相続人が支払をしなければならないのです。自分は保証した覚えがないのに、見も知らない他人の借金を返済しなければならない可能性もあり、大変な不利益が及びます。

相続の対象にならない財産

次に、相続の対象にならない財産を見てみましょう。一般的には相続財産になると思われがちだけれども、実は相続財産にならないものがあるので、注意が必要です

祭祀財産

遺産の中でも、「祭祀財産」と呼ばれるものは、相続の対象になりません。祭祀財産とは、先祖をまつるための資産のことです。たとえば、墓地や墓石、仏壇や仏具、神棚などのものです。遺骨も遺産分割の対象にならないと考えられています。そこで、これらの祭祀財産については、相続人らが遺産分割の話し合いをして、誰が相続するかを決めることがありません。

生命保険金

生命保険の死亡保険金も、相続財産になるかどうかが問題になりやすい財産です。

死亡保険金は、基本的には相続財産になりません。死亡保険金は、死亡者から誰かに受け継がれるものではなく、受取人の固有の権利であると考えられているためです。ただ、生命保険金は、民法上の遺産分割の対象にはなりませんが、相続税課税の際には相続財産とみなされて、課税対象になるので注意が必要です。

また、遺産分割の場面でも、死亡保険金が問題になることがあります。死亡保険金の金額があまりに高額で、それをひとりの相続人が相続すると他の相続人との間で不公平が大きくなるときには、是正が行われます。具体的には、生命保険の受取が「特別受益」と評価されて、保険金受取人の遺産の取得割合が減らされることになります。

一身専属的な権利

被相続人の権利義務も相続の対象になりますが、被相続人の一身専属的な権利義務は、相続されないこととなっています。一身専属的な権利義務とは、被相続人の個人的な人間関係や信頼関係によって発生していた権利義務のことです。たとえば、被相続人が身元保証人になっていた場合、身元保証人の地位自体は相続の対象になりません。ただし、身元保証していた人が問題を起こして、すでに損害が発生していた場合、具体化した損害賠償義務については相続の対象になります。

また、年金の受給権や生活保護の受給権などの権利についても、被相続人の一身専属的な権利と理解されているため、相続されません。養育費や婚姻費用、扶養料の支払請求権や支払い義務などの身分にもとづく権利義務も相続されません。そこで、父親が誰かに養育費を支払っていても、相続した子供が引き続いて養育費を支払う必要はありませんし、反対に、死亡した子供が別れた夫から養育費をもらっていた場合でも、母親は引き続き別れた夫に養育費を請求することはできません。

会社との労働契約や婚約などについても同様です。サラリーマンの父親が死亡したときに息子が代わりに会社に行かなければならないことはありませんし、婚約していた息子が死亡していたときに父親が代わりに結婚することもありえません。

相続財産を確定する方法

どのようなものが相続財産になるのかがわかったとしても、遺産分割をするためには、具体的にどのような相続財産が存在しているのかを明らかにする必要があります。そこで、以下では相続財産を確定させるための方法をご説明します。

相続財産調査

まずは被相続人の自宅を調べる

相続財産を確定させるためには、相続財産調査をしなければなりません。相続財産調査とは、被相続人が残した遺産の内容を調べる手続きです。相続財産調査では、かなり地道な作業が必要です。具体的には、被相続人宅に残された資料を調べます。引き出しやタンス、金庫や机の中などに、預貯金通帳や証書、現金や積立金の証書などがないかを調べます。貴金属や骨董品などについても同様です。

郵便物をチェックする

郵便物を調べる方法も有効です。役所から固定資産税についての通知が来ていたり、銀行や証券会社から連絡書や残高通知書などが届いていたりすることもあります。サラ金やカード会社からの葉書があったら、借金をしていることも判明します。

不動産の名寄せ帳の開示を受ける

不動産については、市町村役場で名寄せ帳を見せてもらうことが役立ちます。名寄せ帳とは、その自治体内での不動産とその所有者についてまとめられている書類で、固定資産課税台帳とも言います。相続人であれば、被相続人に関する部分を開示してもらうことができるため、亡くなった人がその自治体内で所有していた不動産を一括で把握することが可能で、資産家の人が亡くなったときには、特に役立つ方法です

ネット取引にも注意

また、最近では、ネット上でお金や株などのやり取りとしている人も多いので、注意が必要です。ネット証券では、郵便による連絡が一切ないことも多いため、ネットでFX取引をしていた人が死亡した事例で、家族がネット取引のことについて気づかないままに長期間放置していて、1000万円以上もの莫大な損失が発生したケースなどもあります。こうした場合、発生した損失についても相続人が責任を負わないといけません。

被相続人がパソコンやスマホを使っていた場合には、そのようなものの内容まで調査しておくべきです。特に、証券会社や銀行のページを頻繁に訪れていた形跡がある場合には、注意が必要です。

借金を相続したくない場合

相続財産には、借金や未払い金が含まれていることがあります。また、被相続人が連帯保証人になっていた場合、保証人の地位も相続人に相続されてしまいます。このような場合、相続人は、相続をしたくないことがありますが、そのための対処方法を説明します。

相続放棄とは

相続人が相続をしないためには、相続放棄か限定承認という手続きをする必要があります。

相続放棄とは、一切の遺産相続をしないことです。相続放棄をすると、その人は、はじめから相続人ではなかったことになります。このように、遺産相続をしないので、借金や保証人の地位も相続せず、相続人であっても支払をする必要がなくなります。

ただし、相続放棄をすると、借金だけではなく、プラスの資産も受けとることができなくなるので、注意が必要です。借金はあるけれども、プラスの資産もたくさんある場合には、うかつに相続放棄をすると、損になってしまうおそれがあります。

限定承認とは

次に、限定承認があります。限定承認とは、遺産の内容を調査して、プラスの資産から債権者などに必要な支払をして、あまりがあったら相続人が相続をする方法です。あまりがなければ相続しません。マイナスの借金だけしか残らない場合には、相続をせずに済みます。

限定承認をするためには相続人が全員共同して行わないといけないので、相続放棄よりもできるケースが限られて来ます。

相続放棄・限定承認の方法

相続放棄も限定承認も、家庭裁判所で「申述」という手続きをすることによって行います。具体的には、家庭裁判所に「相続放棄の申述書」や「限定承認の申述書」を提出することによってできます。

相続放棄・限定承認の期限

相続放棄も限定承認も、期限があるので注意が必要です。民法では、「自分のために相続があったことを知ってから」3ヶ月以内に行う必要があるとされています。具体的には、相続があったこと(被相続人が死亡したこと)と、何らかの相続財産があったことの2点を知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所で手続きをしなければなりません。

この期限を熟慮期間と言いますが、熟慮期間を過ぎると、相続放棄も限定承認もできなくなって、借金を相続するしかなくなるので、相続をしたくないならとにかく早めに相続放棄または限定承認をしましょう。

誰が遺産をもらうのか

遺産相続の2つ目のポイントは、「誰が遺産をもらうのか」ということです。これについては、民法上で定めがあるので、以下で確認していきましょう。

法定相続人

民法では、遺産相続が起こったときに誰が相続すべきかについて定めています。法律上相続権のある人のことを、法定相続人と言います。それでは、具体的には誰が法定相続人になるのでしょうか?以下で見てみましょう。

夫や妻はいつでも法定相続人

まず、亡くなった人に配偶者がいたら、配偶者はいつでも相続人になります。それ以外の法定相続人には、順位があります。

第1順位の相続人は子供

第1順位の法定相続人は、子供です。養子縁組をしていたら養子も相続人になりますし、別れた妻や夫との間に子どもがいたら、その子どもも法定相続人です。結婚していない女性との間に子どもがいて、認知していたら認知した子どもも相続人となります。子供が親より先に死亡していたら、孫(死亡した子供の子供)が法定相続人となります。

第2順位の相続人は親

子供や孫がいない場合には、親が第2順位の法定相続人となります。両親が生きていたら両親とも法定相続人ですし、片親しか生きていなければ、生きている親が相続します。両親ともなくなっていて、祖父母が生きていたら、祖父母が法定相続人となります。

第3順位の相続人は兄弟姉妹

被相続人に子供も親もいない場合には、第3順位の相続人は兄弟姉妹です。兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していたら、その兄弟姉妹の子供である甥や姪が相続をします。

相続人がいない場合

被相続人に配偶者も子どもも親も兄弟姉妹もいない場合には、相続人が不存在となってしまいます。その場合には、相続財産を管理するための相続財産管理人を選任してもらい、相続財産を精算してもらう必要があります。

どのくらい遺産をもらうか決める方法

遺産相続で重要なポイントの3つ目は、どのくらい遺産をもらうかという分配割合です。これについては、どのような割合になっていて、どうやって決めたら良いのでしょうか?以下で見てみましょう。

法定相続分

民法では、誰が相続をすべきかという法定相続分だけではなくどのくらい相続をすべきかという法定相続分についても定めています。具体的には、以下の通りです。

配偶者のみが相続人になる場合

まず、配偶者のみが相続人になる場合には、配偶者が全部相続します。

配偶者と子どもが相続人になる場合

配偶者と第1順位の相続人である子どもが相続人になる場合には、配偶者が2分の1、子供が2分の1です。子供が複数いたら、子供の取得分が子供の人数で頭割り計算されます。たとえば、子供が2人いたら、1人ずつの取得分は、2分の1×2分の1=4分の1となります。子供だけが相続する場合には、子供の頭数で遺産を分配します。このとき、今の配偶者の子どもか前妻(夫)の子供かによって取得割合に違いはありませんし、養子と実子、認知した子どもによる違いもありません。すべて平等の相続割合となります。

配偶者と親が相続人になる場合

配偶者と第2順位の親が法定相続人になる場合には、配偶者が3分の2、親が3分の1の相続分となります。両親が生きていたら、1人1人の相続分は、3分の1×2分の1=6分の1ずつとなります。親のみが生きている場合には、両親が全部相続します。親がひとりなら全部ですし、両親が生きていたら2分の1ずつとなります。

配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合

配偶者と第3順位の兄弟姉妹が法定相続人になる場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。兄弟姉妹が複数いる場合には、兄弟姉妹の分を頭割りで分けます。たとえば、兄弟姉妹が3人いたら、兄弟姉妹1人1人の取得割合は、4分の1×3分の1=12分の1ずつとなります。兄弟姉妹のみが相続人になる場合には、兄弟姉妹の人数で頭割り計算をします。

遺産の分配を決める方法

民法によって、法定相続人の法定相続分が決められていますが、具体的に誰がどの遺産を取得するかについては、個別のケースにおいて決めなければなりません。そのために必要になるのが、遺産分割です。

遺産分割協議とは、どの相続人がどの遺産をもらうのかを決定するための手続きです。すべての相続人が参加する必要がありますが、相続権のない人は参加することが認められません。遺産分割をするときには、法定相続分に従って遺産の分配をしていくことが原則ですが、全員の合意があれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分配することもできます。たとえば、母親と子供が相続人になっているとき、本来なら母親が2分の1、子供が2分の1の相続分となりますが、遺産分割によって、母親が全部遺産を相続することもできますし、子供に3分の2を渡すことなども可能です。

このように、遺産分割は、具体的な遺産取得方法を決める手続きなので、遺産相続の場面で非常に重要で、トラブルも多く起こります。

以下では、具体的な遺産分割の手続きの進め方をご説明します。

遺産分割協議

遺産分割協議には相続人が全員参加する

遺産分割を行うときには、まずは相続人が全員集まって遺産分割協議をすることが基本です。遺産分割協議とは、遺産分割の方法を決めるための話合いのことです。特に方式は決まっていないので、電話やテレビ会議、手紙やメールなどを使ってやり取りをすることも可能です。

注意しないといけないのは、必ず相続人が全員参加しないといけないということです。1人でも漏れていたら、遺産分割は無効です。相続人に未成年者がいる場合には、家庭裁判所で特別代理人という人を選任しなければならないことがありますし、認知症の相続人がいる場合には、成年後見人を選任しなければならないことがあります。

遺産分割協議書の作成方法

すべての相続人が合意したら、その内容をまとめた書類を作成します。その書類のことを「遺産分割協議書」と言います。遺産分割協議書には、相続人全員が署名と押印をしなければなりません。このとき、法律上は、実印である必要はありませんが、実際には実印で押印することが多いです。遺産分割協議書は、不動産の名義書換のときに必要になりますが、そのとき、実印で押印したものが必要ですし、全員の印鑑登録証明書の添付も必要だからです。そこで、実印以外で遺産分割協議書を作っても、不動産登記の際に再度実印で遺産分割協議書を作り直さないといけません。また、実印で押印している方が、遺産分割協議書の信用性も高くなり、将来のトラブルも防ぎやすいです。

そこで、遺産分割協議書を作成するときには、全員が実印で押印をして、印鑑証明書も添付しておきましょう。

遺産分割調停

遺産分割調停とは

相続人が集まって遺産分割協議を行っても、意見が合わないことがあります。その場合には、話合いでは遺産分割の方法を決めることができないので、遺産分割調停をしなければなりません。遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して、遺産分割の方法を決める手続きです。

調停を利用すると、家庭裁判所の調停委員が話合いを仲介してくれます。このことにより、お互いが妥協をして話合いがまとまることも多いです。相続人が全員合意したら、調停が成立して、家庭裁判所が調停調書を作成してくれます。調停調書があると、遺産分割協議書がなくてもさまざまな相続手続きをすることができます。

遺産分割調停は、全員参加が必要

遺産分割調停にも、相続人が全員参加する必要があります。この場合、申立人か相手方のどちらかに相続人が入っていたら足ります。多くの場合、自分と意見の合う相続人と共同で遺産分割調停を申し立てて、意見の合わない相手を相手方とします。

遺産分割に関心がなくて、「どうでもいい」と思っている相続人がいる場合でも、必ず調停の当事者にしないといけないので、注意が必要です。共同で申立をしないなら、相手方として参加させましょう。相手が遺産分割調停に来たくないなら、代理人弁護士を立ててもらう方法などもあります。

相続手続きはどの専門家へ依頼すればいい?

よく相続では、専門家がタッグを組んでみんなで手続きをするので安心という広告を見ます。安心かもしれませんが、専門家が何人も関わったら費用が気になりますよね。

さらに、資格を持っていない業者などが専門家を紹介するとして、あいだに入ってきたら費用はさらに膨れ上がります。

とは言え、一体どの専門家に相談、依頼すればより安く、スムーズに手続きが進められるのか、一般の方にはわかりずらいかと思います。

相続はケースバイケースで、個々の状況に応じて、相談や依頼する専門家をどの専門家にするのか検討する必要がありますが、どの専門家へ相談、依頼するのがよりベストなのか、ケースに応じてご説明させていただきますので、ご自身で検討する際にご参考になれば幸いです。

税理士

相続というと相続税、相続税というと税理士という感じで思い浮かべる方もいると思います。そして、実際に税理士しか相談、依頼できないことがあります。

それは、「相続税の申告」です。

ただし、相続税の申告は相続が発生した中でも4%程度(※平成27年1月1日以降に相続が発生した場合は1.5~2倍に増えたと言われています。)の人しか関係ないと言われています。関係ないというのは、相続税を支払う必要もなければ、そもそも相続税の申告をする必要もないのです。

何かを相続したからと言って、かならずしも相続税がかかるというものではありません。現行の法律では、相続人がいれば最低でも3600万円超の相続財産がないと、相続税を支払う必要はありませんので、覚えておいてください。また、3600万円を超えたらすぐに相続税が発生するわけでもありませんので、まずは法定相続人の人数が何人になるのかを確認し、相続税の基礎控除額がいくらになるのかを確認しましょう。

そのうえで、基礎控除額以上の遺産がある、ということであれば、相続税申告が必要なケースかもしれませんので、まずはお気軽に千葉相続遺言相談窓口までご相談ください。

弁護士

弁護士については、いわゆる「争族」といった相続人間の争いごとに発展してしまっているケースや、争いごとになる可能性が高いケースの場合、相談や依頼を検討するとよいでしょう。実際、話し合いがうまく進まず、遺産分割調停や審判など裁判所での手続きが必要になった際には、弁護士しか正式な代理人となることができませんので、最初から相談や依頼をしておくと、そのまま裁判手続きでも代理人として動いてもらえるのでムダな費用や時間がかからないといったメリットがあります。

ちなみに、実際に裁判で相続人同士が争う場合、最終的には法定相続分という法律で決められた相続割合で分割になることがほとんどです。

なお、弁護士へ依頼する場合、相続人間でもめているケースが多くなり、その場合手続きが完了するまでの時間もかかることが多く、その分、他の士業と比較して費用が高いことがほとんどですので、できるだけ費用を抑えたいという人は、自分でどこまでできるのか、どこまで依頼するかを検討するとよいでしょう。

司法書士

司法書士については、不動産の名義変更(相続登記)ができます。相続が発生した中でも全体の約50%のケースで不動産の相続が発生します。

それを考えると、この不動産の名義変更(相続登記)ができますので不動産を持っているという人は、いずれ司法書士に依頼することになります。

そうであれば、最初から司法書士に相談、依頼すると、何人も専門家に報酬を支払う必要や連絡をとる必要もなく、まとめて依頼することができ便利といえます。

相続税の申告が必要ない、とくに相続人同士で争っていないという場合は、司法書士が基本的にすべての相続手続きを進めることができるので相談する方(相続人)の負担が少なく済みます。

千葉相続遺言相談窓口は相続に強い司法書士が在籍しておりますので、お気軽にご相談ください。

行政書士

一般の方の多くが、司法書士と行政書士の区別があまりついていません。
わかりやすく区別するとすれば、
司法書士 → 不動産登記の専門家。裁判手続書類作成も可能
行政書士 → 行政機関における書類収集や作成の専門家
司法書士は登記の専門家ですので、法務局提出書類の作成(申請)に特化しています。
行政書士は、法務局提出書類の作成ができず、職権がないので代理人申請もできません。

地方では、行政書士が法務局提出書類の作成代行をしているケースもありますが、それは司法書士法違反の行為となり処罰されます。

行政書士が相続業務のなかでできることとしては、戸籍等証明書類の収集代行や遺産分割協議書の作成、不動産登記や相続税申告手続きを除く相続手続きの代行となります。

そのため、遺産に不動産が含まれるようなケースの場合は、行政書士へ依頼しても肝心な登記書類の作成ができず、追加で司法書士に依頼が必要となるため、メリットがあまりありません。司法書士へ相談・依頼するのが最適と言えます。

信託銀行

信託銀行は価格がかなり高いです。ものすごい資産家の方もしくは相続のことを何も知らない方が利用されていると思われます。

大手信託銀行というネームバリューだけで安心感がある、というのが最大のメリットですが、その分多大な費用がかかることになります。

銀行へ依頼して何をやってくれるかと言うと、わかりやすくいえば、相続コンサルティング業務です。相続登記が必要であれば、銀行提携先の司法書士が手続きを行い、相続税申告が必要であれば、銀行提携先の税理士が手続きを行います。

勿論、銀行だけではなく、そうした下請けの士業に対する報酬もかかりますので、士業へ直接相談・依頼するケースと比較すると、銀行へ支払う費用が余分にかかっていることになります。