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相続税(そうぞくぜい)

なぜ相続税がかかるのか

相続税の趣旨は「富の再分配」ということです。 先代が築いてきた財産を何の負担もなく次世代がそのまま引き継ぐことになると、貧富の差が固定してしまう原因になることから、その富を社会に還元するという意味を持っているのです。

相続税はどんな時にかかるのか

相続税は皆にかかると思っている人もいるのですが、ある一定以上の相続財産を超えていなくては相続税は課税されません。これを「基礎控除」といいます。 平成27年から施行された改正により基礎控除は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」となり、従来の6割にまで引き下げられました。 これによって相続税がかかる人は都市部では従来の倍近くにまで増加したと言われています。 以前は富裕層にしか関係ないと思われていた相続税ですが、現在では大都市にマイホームを保有していただけでも相続税の心配をしなければならない時代になっています。

相続税申告はタイトなスケジュールになっている

相続税申告が必要な場合、「相続開始の翌日から10カ月以内」となっているため、実際にはかなり厳しいスケジュールになります。 この間に相続人を戸籍により特定し、相続財産と負債を確認して申告書を作成し、申告、納税までを済ませなければならないのです。そして、遺産分割協議が終わっていなかった場合はとりあえず法定相続分(民法で決められた相続分)で相続したものとみなして申告しますが、この場合は納税者にとって有利になる特例が使えないこともあります。 たとえば、配偶者について大幅に相続税が有利になる「配偶者の税額軽減」という制度があります。 配偶者は、被相続人(亡くなった人)の財産が形成される過程で多大な貢献をしていると考えられ、また被相続人の死亡後に生活保障がされなければならないという観点から税額が優遇されています。 具体的には、配偶者が取得した遺産額のうち・配偶者の法定相続分(民法で定められた相続分)もしくは・1億6000万円、これらのうちいずれか多い金額までは相続税がかからないことになっています。 もう一つ、相続税が大幅に優遇される措置として「小規模宅地等の評価減の特例」があります。 これは、被相続人の自宅や事業を営んでいた宅地については、相続税の負担によってこれを手放すようなことになれば本末転倒になるため、相続税の評価額を最大80%という大幅値引きして税額を優遇するというものです。 これらについては遺産分割協議が終わって財産の帰属が決まらなければ適用することができませんから、申告期限までに遺産分割協議が整っていなければかなり多めの相続税を納めておかなくてはならないことになってしまいます。 (遺産分割協議が終わっていなくても申告期限を伸長することはできません)

相続税の計算はどのように行うのか

相続税の計算は「受け取った財産に税率をかける」という単純なものではなく、もう少し手順が複雑です。 1.相続財産を調査し、合計する。 ポイントとしては、・みなし相続財産(死亡保険金など)を加算する、・借金がある場合は差し引く・非課税財産(仏壇など)を差し引く・相続開始前3年以内に行われた生前贈与を加算する、といった点です。 2.相続税の対象となる金額を算出する。 1の金額から、基礎控除「3000万円+(法定相続人の数×600万円)」を引いて、課税遺産総額を算出する。 3.法定相続分で分ける。 それぞれの相続人の法定相続分で課税遺産総額を分けます。 4.相続税の総額を算出する。 相続人ごとに法定相続分による取得金額に税率(相続人の取得金額により10%から55%と段階的に設定されています)をかけ、相続税額を算出します。 この相続税額の合計が今回の相続に関するすべての相続税額となります。 5.各相続人の相続税額を算出する。 相続税の総額を、実際の相続割合から各相続人で分けます。 最後の段階で、各人特有の事情を考慮して「2割加算」や「税額控除」などの金額調整を行います。

節税だけではなく紛争対策、納税資金準備も必要

相続税の難しいところは、ただ単に節税すればよいというわけではなく、そこに相続人同士の紛争を防いだり、申告期限までに確実に現金で納税資金を準備しなければならないという事情が加わることです。 たとえば、上記の基礎控除は法定相続人の数を基準としているため、養子縁組をした場合は基礎控除の額が増えます。しかし、節税のためだからと行った養子縁組が他の相続人にとって感情的に受け入れられないものである場合もあります。 また、被相続人(亡くなった人)が納税資金のことをまるで考えずに亡くなってしまったため、相続人は泣く泣く土地を売却して納税しなくてはならないこともあります。 こういった事態になることを防ぐためにも、相続税がかかることが予測される家庭はまだ被相続人が元気であるうちに税理士に相談の上でさまざまな対策を立てておくことが必須といえるのです。

相続税簡単シミュレーション

千葉相続遺言相談窓口ではどのくらいの相続税がかかるのか、簡単にシミュレーションができます。下記のリンクより是非ご利用ください。

相続税かんたんシミュレーション

贈与税簡単シミュレーション

生前贈与(せいぜんぞうよ)

生前贈与(せいぜんぞうよ)とは、ある人が自分の死亡(=相続開始)を待たず、生前に相続人などに財産を与えること。節税目的で行われることもある。

生前贈与は、相続税対策を目的として利用されることが一般的です。

これまでの相続税の非課税枠(基礎控除額)は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」とされていました。しかし、平成25年度税制改正により、相続税法が改正され、平成27年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税については、この基礎控除額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となり、従来であれば相続税がかからないような方でも、相続税がかかる可能性が高くなりました。

適切に生前贈与を選択すれば、贈与した財産の分だけ、原則として相続税がかかる財産が減り、相続税を軽減させることができます。

また、相続財産の分け方を生前に決定できるため、相続人同士の紛争防止やご家族の相続手続き時の負担軽減など、様々な効果も期待できます。

生前贈与の注意点

  1. 必ず贈与の証拠を書面に残す

    贈与の合意は必ず書面で残すようにしましょう。
    贈与を書面で残しておかなければ、後日相続が発生した際、相続人等から契約の成立について争われたときにその主張・立証できず、契約が否定されてしまう可能性があります。
    また、税務調査で贈与の証明ができないと贈与が否認されるといったケースもあるようです。
    親族間の贈与であればあるほど、書面に残すことをおろそかにしがちです。法律的にも税務的にもリスクが伴いますので、必ず贈与契約書を作成するようにしましょう。

  2. 贈与税の対策は慎重に行う

    個人から個人へ財産を贈与する際には、受け取った人に原則贈与税が課税されます。
    贈与税が課税される場合には、贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までの間に確定申告と納税を完了させなければなりません。
    また、相続税を減らそうと生前贈与によって一気に財産を減らしてしまうと、多額の贈与税がかかる場合もあり、逆に税負担が増大してしまうことがありますので、毎年少しずつ贈与したり、1人に対してではなく複数人に対して贈与するなどの工夫が大切です。

  3. 相続発生前3年間の贈与は相続税の課税価格に加算される場合がある

    親子間で贈与を検討している場合には、早めの着手が望ましいと言えます。
    例えば、父親の体調が思わしくない状態となったので、急いで子どもに財産を贈与するとします。その贈与が、父親が亡くなる3年前までになされたものである場合、贈与そのものは成立するのですが、相続税の計算上はその贈与がなかったものとして、相続税が課税されます。この制度は「生前贈与加算」と呼ばれ、近い将来に相続が発生することを予想して、相続直前になってからの不当な相続税逃れを防止するためにできた制度です。これにひっかかってしまうと、相続税の軽減のために行った贈与は無意味なものとなってしまいますので、注意が必要です。

  4. 遺留分には要注意

    生前贈与をするときは、遺留分にも注意を払う必要があります(詳細については遺留分をご覧ください)。民法では、相続開始前1年間にした贈与は、遺留分減殺請求の対象になります(民法第1030条)。また、相続開始の1年以上前にした贈与であっても、場合によってはその対象になってしまいます。
    生前贈与をするときは、将来の争いにならないよう、遺留分を十分考慮した上で、家族に自分の意志を伝えておくなどの配慮が大切です。
    遺留分についてはこちら

未成年者控除(みせいねんしゃこうじょ)

相続税の未成年者控除について

未成年者控除(みせいねんしゃこうじょ)とは、相続人が20歳未満の未成年者である場合、相続税額から一定の金額を差し引くことができる制度。 遺産額から控除される基礎控除などとは違い相続税額から直接控除されるため、相続財産の額によっては全額控除されることもあり得ます。

未成年者控除の適用条件

未成年者控除を活用するためには、次の4つの要件を全て満たなくてはいけません。

  • 相続や遺贈で財産を取得している
  • 居住無制限納税義務者又は非居住無制限納税義務者である
  • 相続や遺贈で財産を取得したときに20歳未満である
  • 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人である

居住無制限納税義務者とは、相続時に日本に居住していた者です。

非居住無制限納税義務者とは、相続人が日本国籍を持っており、海外に在住している場合です。

相続人と被相続人両方が、10年超に渡り海外に住んでいるかがポイントで、いずれかが海外居住10年以下の場合は、「無制限納税義務者」に該当します。

未成年者控除の控除額

(20歳 ー 相続した時の年齢)× 10万円

未成年者の年齢は満年齢で計算され、1年未満の期間は切り捨てます。例えば、15歳5ヶ月の場合は15歳、18歳11ヶ月は18歳となります。未成年者の年齢が低いほど控除額は大きくなり、相続税は安くなります。

未成年者控除の必要書類

未成年者控除を利用するためには、通常の申告書類の他に相続税申告書の第6表「未成年者控除・障害者控除額の計算書」が必要になります。この計算書に未成年者控除の金額を記載して税務署へ提出します。

未成年は相続の権利はありますが、特別代理人がいなければ相続の手続きが行なえません。そのため、誰が代理人かを表す「特別代理人選任の審判の証明書」も合わせて提出します

利益相反行為に該当する場合は特別代理人が必要

未成年者が相続人になる場合には、未成年者の代わりに手続きをする代理人を選定しなければいけません。

特別代理人にふさわしい人

特別代理人は家庭裁判所によって選任された代理人のことを指します。代理される者との間に利益相反関係がなければ誰でも特別代理人になることができます。そのため、相続の場合、同じ被相続人の相続人でなければ親族であっても問題ありません。

特別代理人の選任に必要な書類

特別代理人を選任する際には次のような書類を揃えて提出します。

  • 特別代理人選任申立書
  • 未成年者の戸籍謄本
  • 親権者(または未成年後見人)の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票
  • 利益相反に関する資料

みなし相続財産(みなしそうぞくざいさん)

みなし相続財産(みなしそうぞくざいさん)とは、被相続人が死亡したときに所有している財産ではではありませんが、相続税の計算上、財産とみなされるもののことで、「相続財産ではないのに相続税に課税されてしまう」ことをいいます。例えば生命保険金や死亡退職金などがあげられます。

代表的なみなし相続財産

生命保険金

被相続人の死亡により相続人が生命保険金を受け取る場合であって、その生命保険金の保険料を被相続人が負担していた場合には、実質的に被相続人の財産が死亡によって相続人に移転したといってよく、なんら相続による移転と変わりないので相続税法上では相続財産とみなされます。(相続税法3条1項の1)
※保険料負担者や受取人によっては相続税ではなく贈与税又は所得税の対象となる場合があります。

死亡退職金

被相続人の退職金等が死亡により相続人等に支給された場合は、その支給が死亡後3年以内に確定した退職金等なら、それは相続又は遺贈により取得したものとみなされます。お金に限らず物や権利でも変わりありません。(相続税法3条1項の2)
なお、3年以内に確定しなかったものは所得税の対象となります。

死亡退職金は相続人等に直接支給されるもので被相続人の死亡により被相続人から相続人等に対して移転するものではありませんが、退職金自体元々は被相続人が将来退職時に取得する財産であり実質的には被相続人の死亡により相続人等に移転したものと言ってよく相続税法上は相続財産とみなされます。

物納(ぶつのう)

物納(ぶつのう)とは、相続税を現金で納付することができない場合、一定の要件を満たし、税務署の許可を受けて土地などの現物で納付する制度。

非課税財産(ひかぜいざいさん)

非課税財産(ひかぜいざいさん)とは、金銭的な価値はあるものの、相続税の対象とならない財産。代表的なものに墓地や仏壇などがある。

倍率方式(ばいりつほうしき)

倍率方式(ばいりつほうしき)とは路線価方式が使われない土地について使用する相続税評価方法。固定資産税評価額にあらかじめ定められた一定の倍率を掛けて計算する。

配偶者の税額軽減(はいぐうしゃのぜいがくけいげん)

配偶者の税額軽減(はいぐうしゃのぜいがくけいげん)とは、配偶者が取得する相続財産で1億6000万円、もしくは法定相続分までのどちらか多い金額については相続税を非課税にするという制度。

特定事業用宅地(とくていじぎょうようたくち)

特定事業用宅地(とくていじぎょうようたくち)とは被相続人が事業を営んでいた、もしくは被相続人と生計を一つにする親族が事業を営んでいたこと、そして取得者が一定条件を満たしているため相続税評価額を80%減額できる宅地。

特定居住用宅地(とくていきょじゅうようたくち)

特定居住用宅地(とくていきょじゅうようたくち)とは被相続人が居住していた、もしくは被相続人と生計を一つにする親族が居住していたこと、そして取得者が一定条件を満たしているため相続税評価額を80%減額できる宅地。