遺言

包括遺贈(ほうかついぞう)

包括遺贈とは包括して遺贈をすることです。

包括してというのは、ある人の持っている権利を一括でまとめて、という意味です。

遺贈というのは遺言で財産を譲与すること、つまり包括遺贈というのは、ある人が遺言で自分の持っている権利の一切合財をまとめてある人に与える意思表示をすることをいいます。

包括遺贈の対立概念は特定遺贈です。特定遺贈とは財産を特定して遺贈することです。

包括遺贈の遺言書の文言の例は次のようになります。

  • 全財産を包括遺贈する場合、遺言者は受遺者に対し全財産を包括して遺贈する
  • 遺産の割合的一部を遺贈する場合、遺言者は,受遺者に対し,遺産の3分の1を遺贈する

遺言執行者(いごんしっこうしゃ)

遺言書の執行(遺言執行)

遺言の検認が終わると、遺言内容を実現させることになります。
遺言書を実現するにはさまざまな手続きがあり、遺言ではそれを執行する遺言執行者を指定できることになっています。

遺言執行者は必ずしも指定しておくものではありませんが、登記の申請や引渡しの手続き、不動産を遺贈するなど、遺言執行者がいなければ実現に手間がかかる事が沢山あります。

遺言ではそうした遺言執行者を指定したり、第三者に指定を委託したりすることができるのです。

遺言執行者の指定は遺言の中だけで認められていて、生前の取り決めは無効になります。
職務が複雑になると予想される時は、遺言執行者を複数名指定しておくことも可能です。

また、遺言で指定を受けた人が遺言執行者を辞退することも認められています。
遺言に指定がなかったときは、相続人や利害関係人が家庭裁判所で選任の請求を行います。

遺言執行者は誰がなってもかまいませんが、法律の知識を要するので、行政書士、司法書士、弁護士などの法律専門家に依頼するのが通常です。
遺言執行者は選任を受けると早速遺言の実行にかかります。

遺言の実行手順

遺言の実行手続について説明いたします。

  1. 遺言者の財産目録を作る
  2. 相続人の相続割合、遺産の分配を実行する遺言に沿った相続割合の指定をして、実際に遺産を分配します。また、登記申請や金銭の取立てをする
  3. 相続財産の不法占有者に対して明け渡しや、移転の請求をする
  4. 遺贈受遺者に遺産を引き渡す相続人以外に財産を遺贈したいという希望が遺言書にある場合は、その配分・指定にしたがって遺産を引き渡します。この際、所有権移転の登記申請も行う
  5. 認知の届出をする認知の遺言があるときは、戸籍の届出をする
  6. 相続人廃除、廃除の取り消しを家庭裁判所に申し立てる

遺言執行者はこのような職務をこなしていかなければなりません。
調査、執行内容は相続人に報告していく義務がありますが、執行が済むまではすべての財産の持ち出しを差し止める権限を持っています。
相続人は、遺言執行の職務を終了したとき、それに応じたの報酬を遺言執行者に支払います。

その報酬額は遺言でも指定できますが、家庭裁判所で定めることもできます。

生前贈与(せいぜんぞうよ)

生前贈与(せいぜんぞうよ)とは、ある人が自分の死亡(=相続開始)を待たず、生前に相続人などに財産を与えること。節税目的で行われることもある。

生前贈与は、相続税対策を目的として利用されることが一般的です。

これまでの相続税の非課税枠(基礎控除額)は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」とされていました。しかし、平成25年度税制改正により、相続税法が改正され、平成27年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税については、この基礎控除額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となり、従来であれば相続税がかからないような方でも、相続税がかかる可能性が高くなりました。

適切に生前贈与を選択すれば、贈与した財産の分だけ、原則として相続税がかかる財産が減り、相続税を軽減させることができます。

また、相続財産の分け方を生前に決定できるため、相続人同士の紛争防止やご家族の相続手続き時の負担軽減など、様々な効果も期待できます。

生前贈与の注意点

  1. 必ず贈与の証拠を書面に残す

    贈与の合意は必ず書面で残すようにしましょう。
    贈与を書面で残しておかなければ、後日相続が発生した際、相続人等から契約の成立について争われたときにその主張・立証できず、契約が否定されてしまう可能性があります。
    また、税務調査で贈与の証明ができないと贈与が否認されるといったケースもあるようです。
    親族間の贈与であればあるほど、書面に残すことをおろそかにしがちです。法律的にも税務的にもリスクが伴いますので、必ず贈与契約書を作成するようにしましょう。

  2. 贈与税の対策は慎重に行う

    個人から個人へ財産を贈与する際には、受け取った人に原則贈与税が課税されます。
    贈与税が課税される場合には、贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までの間に確定申告と納税を完了させなければなりません。
    また、相続税を減らそうと生前贈与によって一気に財産を減らしてしまうと、多額の贈与税がかかる場合もあり、逆に税負担が増大してしまうことがありますので、毎年少しずつ贈与したり、1人に対してではなく複数人に対して贈与するなどの工夫が大切です。

  3. 相続発生前3年間の贈与は相続税の課税価格に加算される場合がある

    親子間で贈与を検討している場合には、早めの着手が望ましいと言えます。
    例えば、父親の体調が思わしくない状態となったので、急いで子どもに財産を贈与するとします。その贈与が、父親が亡くなる3年前までになされたものである場合、贈与そのものは成立するのですが、相続税の計算上はその贈与がなかったものとして、相続税が課税されます。この制度は「生前贈与加算」と呼ばれ、近い将来に相続が発生することを予想して、相続直前になってからの不当な相続税逃れを防止するためにできた制度です。これにひっかかってしまうと、相続税の軽減のために行った贈与は無意味なものとなってしまいますので、注意が必要です。

  4. 遺留分には要注意

    生前贈与をするときは、遺留分にも注意を払う必要があります(詳細については遺留分をご覧ください)。民法では、相続開始前1年間にした贈与は、遺留分減殺請求の対象になります(民法第1030条)。また、相続開始の1年以上前にした贈与であっても、場合によってはその対象になってしまいます。
    生前贈与をするときは、将来の争いにならないよう、遺留分を十分考慮した上で、家族に自分の意志を伝えておくなどの配慮が大切です。
    遺留分についてはこちら

公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)

公証役場で、公証人および証人2名の立ち会いのもとに作成する遺言書。原本が公証役場に保存されるため、被相続人の遺志を証明する能力が極めて高い。
遺言書を作成する場合、自筆証書、公正証書のいずれかを選択するのが通常ですが、公証役場で作成する「公正証書遺言」のほうがより安心確実だといえます。

公正証書遺言作成の手続きと流れ

公証人との事前打ち合わせ

遺言の内容が決まったら、司法書士が公証人との間で事前打ち合わせをします。

具体的には、司法書士が作成した遺言書原案を公証人に送信し、公正証書遺言の案を作成してもらいます。ご依頼者様には、公証人が作成した公正証書案をご覧いただき、問題が無ければ公証役場への訪問日時を決めます。

公証役場での遺言書作成

事前に予約した日時に公証役場へ出向きます。当日の進行は公証人に任せておけばすべて大丈夫です。遺言内容は事前に打ち合わせしたとおりですから、難しいことを聞かれるようなこともありません。

また、当事務所へご依頼くださった場合は、司法書士も証人として同席しますから、公証人とのやりとりに不安を感じることも一切ありません。

手続きが済んだら公証人の手数料を支払い、できあがった遺言書は当日に受け取れます。遺言書は正本と謄本の2部が渡されるので、遺言者ご本人が2通とも保管しておくか、謄本を受遺者に預けておくこともできます。

公正証書遺言作成の必要書類

公正証書遺言を作成するには、最低限次のような書類が必要となります。

  • 遺言者本人の印鑑登録証明書
  • 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
  • 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票
  • 財産の中に不動産がある場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書、または固定資産税の税納税通知書(評価額が分かる部分)

当事務所へお越しくだされば、必要書類についてわかりやすくご説明しますので、とくに事前準備は不要です。

成年後見人(せいねんこうけんにん)

成年後見人(せいねんこうけんにん)とは、認知症などで判断能力が鈍った人の代わりに法律行為を代理し、被後見人(認知症などの本人)の財産を悪徳商法や本人に不利な契約などの被害から守るための役割をする人です。 成年後見人には「法定後見」と「任意後見」の二種類があります。

「法定後見」とは一定の範囲の申立権者が家庭裁判所に申し立てを行い、最終的には裁判所が適切な後見人を判断して選任するものです。
これに対し、「任意後見」とは、本人にまだ判断能力があるうちに行う契約であり、裁判所が直接に選任するわけではありません。
実際に成年後見人を選任するきっかけとなるのは、何らかの法律行為をしたい場合に関係者の中に判断能力のない人がいたため、その行為ができなくなっているといった状況が想定されます。中でも代表的なのが遺産分割協議でしょう。

成年後見人はどうやって選任するか?

では、法定後見人が選任されるまでにはどのようなプロセスが必要なのでしょうか。

まず、申立権者としては「本人、配偶者、4親等内の親族、市区町村長、他」となっています。たとえば身寄りのない独居老人で、申立てをしてくれるような人も周囲にいない場合は市区町村長が申立てることがあります。
裁判所には事案による「管轄」があり、成年後見申立てについては本人の住所地の家庭裁判所に申立書と添付書類(戸籍や住民票など)を提出することになります。
申立ての時点で「後見人候補者」といって、この人が適任であると考える人を家庭裁判所に挙げるのですが、もし裁判所が総合的に状況を見てその候補者が不適切であると考えた場合には「専門家後見人」として弁護士や司法書士が選ばれることもあります。
専門家が後見人に就任すると報酬が発生しますが、報酬は一律に決まっているわけではなく、一定の期間ごとに出される「業務報告」に基づいた適切な報酬を、本人の資力に応じて裁判所が決定することとなります。

成年後見人がつくと財産が裁判所の管理下に置かれる

成年後見人は、財産目録を作成したり、家庭裁判所に報告を行うなどの事務的な業務を行います。被後見人の財産を適切に管理することが仕事ですので、長期間にわたり責任を持った仕事ができる人でなくてはなりません。

いったん成年後見人がついてしまえば被後見人の財産は基本的に「被後見人の利益になる」目的でしか使うことができません。今まで同居して親の財産をある程度自由にしてきた人でも家庭裁判所の管理下に置かれることになるため、そもそもの制度趣旨を理解した上で申立てを行うことが大切です。

成年後見人が気をつけるべきこと

成年後見人は特に財産管理の面で親族とのトラブルになりやすいことが多く、使い込みなどの誤解を受けないよう、細心の注意を払って財産を管理しなくてはなりません。
後見人になるのが親族であろうと法律家などの第三者であろうと、「成年後見人は被後見人の財産を適切に維持管理するために存在する」という原則を忘れてはなりません。
常に「他人の財産である」という意識を持ち続けていなければならないのです。
基本的には収入や支出が生じるごとに金銭出納帳につけていくことですが、表計算ソフトなどを有効に活用し、効率的に処理できるようにしておくことが望ましいといえます。

では、多くの場合に生じる「預金」や「不動産」の管理について注意点を確認しておきましょう。

預金口座の管理

もし被後見人の口座が数口ある場合、なるべく管理しやすいように口座をまとめる方がよいでしょう。多くの金融機関では「〇〇成年後見人〇〇」のように、後見人名義にすることができます。その場合、金融機関に対し「後見開始の審判書」や「後見人自身の身分証明書や印鑑証明書」を提出しなくてはなりません。

実際の預金の引き出しの際は銀行の本支店で行わなくてはならないことがほとんどであり、キャッシュカードも後見人名義では発行してくれないことが多いと考えられます。

不動産の管理

不動産とひとことで言っても、「自宅不動産」なのか「他人に賃貸している物件」なのかで管理の注意点はまったく異なります。

自宅については次のとおりです。

土地については特に隣地との関係で適切に管理されているか(たとえば隣からの樹木の張り出しがないかどうかなど)、建物については雨漏りや破損がないかどうかなどをチェックします。
もし補修などの必要があれば被後見人の財産から適切な範囲での支出を行い、業者に発注することができます。
ただやはり大がかりな出費を伴う場合、あらかじめ家庭裁判所に相談することが必要です。

事業用不動産については次のとおりです。

賃借人との契約関係がどうなっているかを確認しておくことは必須です。
更新時期が近づいていないかどうか、また、更新の際に適切な賃料に改定するべきではないかといったことも検討事項になります。

そして、これは自宅でも同じことがいえますが、公租公課(固定資産税など)の支払いが適切にされているか(滞納していないか)をチェックしておくことも非常に重要です。

検認(けんにん)

公正証書遺言以外の遺言書につき、被相続人死亡後に家庭裁判所に持ち込んで、その存在を証明してもらう手続き。遺言書の偽造や変造を防止するために行う。

遺産分割(いさんぶんかつ)

「遺産分割」というのは、相続財産が最終的にどの相続人に帰属するのかを決定するための手続きです。

遺産はとりあえず相続人の共有になる

「相続」は人の死亡によってその瞬間に発生するものであり、人為的に行うものではありません。つまり、相続人がそれを希望するか否かを問わず、いったんは法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)全員の共有状態になっています。

つまり、自分がその財産を保有しているという自覚がまったくなかったとしても相続財産の共有持分を保有しているという理屈なのです。そして、その共有状態は「遺産分割協議」をすることによって遡って「相続することになった相続人に帰属する」ことになります。

実際にそのことがどのような場面で影響してくるのかというと、たとえば相続人の一人が債務整理をするような場合です。

たとえば、個人再生や自己破産といった手続きでは、申立人(債務者)にどのくらいの財産があるのかということが手続きに影響してきます。

自己破産の場合、もし財産があればそれを売却する手続きが必要になるため破産管財人が選ばれるので、財産のあるなしによって手続きの流れが大きく変わってくることになります。

遺言書があればそれが優先する

もし、被相続人(亡くなった人)が、「自分の遺産はこのように分けてほしい」などの希望を法的に有効な遺言書で遺していれば、そちらが優先されることになります。つまり、法定相続人の遺産分割協議を待たずに遺産の分け方が決定することもあるわけです。

遺言書があるかどうかの確認の仕方ですが、もし故人が公正証書遺言を作成していた場合、全国どこの公証役場からでも相続人であることを証明すれば検索してもらうことができます。

ただ、遺言書を自宅で書いている「自筆証書遺言」の場合はどこに保管してあるのかがわからないことが多いでしょう。よって、故人の部屋や貸金庫、その他思いつく限りあらゆる場所を探さなければならないこともあります。

もし、自筆証書遺言があったらそれは必ず「検認」という手続きを経なければなりません。検認というのは家庭裁判所で行われる「証拠保全」のための手続きです。要するに、遺言書がその時点においてその状態で存在していたことを証明する手段ということになります。

よって、検認により不正な改ざんなどを防ぐことはできますが、遺言書の内容そのものが適切かどうかというのはまた別問題になりますので、その点を争いたい相続人は別途、協議を持ちかけるか調停や裁判をしなければならないこととなります。

また、もし封がされている遺言書を勝手に開封してしまうと5万円以下の過料に科せられるので、その点にも注意しなければなりません。

日本における遺言書作成割合はまだまだ低く、多くの場合は遺産分割協議を行わなくてはならないこととなります。

遺産分割協議のルール

遺産分割協議は、法定相続人全員で行わなければなりません。たとえ連絡が取れない相続人や認知症の相続人がいたとしてもその人を外すことはできないのです。

もし行方不明の人がいれば「不在者の財産管理人」、認知症の人がいれば「成年後見人」など、家庭裁判所によって適切な代理人を選んで行わなくてはなりません。

近年、高齢化の進行によって「相続人の一人が認知症」ということも珍しくありません。そのような場合は認知症の相続人について「成年後見人」という役職の人を選んで、代わりに遺産分割協議をしてもらわなければならなくなります。

ただし、成年後見人を選んだとしてもその人もまた相続人の一人であった場合はさらに遺産分割協議だけのための「特別代理人」を選ぶという二段階の手続きになります。

もし成年後見人もしくは特別代理人が本人に代わって遺産分割協議をするのであれば、少なくとも本人の「法定相続分(民法で定められた相続分)」は確保しなければならなくなるため、他の相続人が考えていた通りの遺産分割ができなくなる可能性もあります。

成年後見制度は本人の財産権を保護するために設けられている制度であるため、その理念に反するわけにはいかないからです。

遺産分割協議をする際は、実際にはなかなか全員が集まることができないことも多いでしょう。

全員が同じ場所に集合して話し合いを持つ必要はないのですが、少なくとも全員が内容に合意をし、署名、実印での押印、印鑑証明書の添付が必要となります。

この、遺産分割協議書は不動産の名義変更、預金解約など色々な手続きにおいて必要とされる書類ですが、金融機関の預金解約等においては、その銀行ごとの独自の書式に押印しなければならないこともあります。

合意ができないときは

もし、どうしても遺産分割の内容に全員が合意できない場合、家庭裁判所に調停の手続きを申立てることになります。調停では、裁判官と調停委員(裁判所が選んだ有識者など)が中立的に話を進めていくことになりますが、一定の内容の遺産分割を強制するわけではありません。

ただ、いったん調停で決めた内容を合意してしまえばこれには法的な効力があります。

遺言(いごん・ゆいごん)

遺言とは何か

遺言とは、ある人が自分が亡くなった際に備えて自分の財産等に関する遺志を実現してもらうべく、書面に希望を書き残すものです。
遺言というとどうしても「お金持ちにしか関係ないもの」「自分の家は財産が少ないから争いなど考えられず、遺言は必要ない」と考えがちです。
しかし、遺言の必要性は財産額とはまったく無関係です。むしろ、財産がなく、各相続人が不満を持ちやすい家や、財産構成が偏っている(たとえば大部分が不動産)家ほど遺言の必要性は高いことになります。

遺言の形式

遺言書を作成しようと思った場合、多くの場合は「公正証書遺言」もしくは「自筆証書遺言」で行われます。

「公正証書遺言」は、公証役場に証人2名とともに出向き、公証人の面前で作成する遺言書です。これは遺言者との面談により公証人に確認してもらうため、遺言者の遺志が反映されている可能性が極めて高くなること、原本を永久的に保存してもらえるため、改ざんの心配がないことなどがメリットです。
相続財産の金額やもらう人の数により数万円から場合によって10万円以上の公証人手数料がかかることが難点ですが、不動産の名義変更などの際はこの公正証書遺言が絶大な効果をもたらしますのでせっかく遺言書を作るのであればぜひ公正証書で行いたいものです。

一方の「自筆証書遺言」は、自宅で自分で準備した便箋等に自筆して行うため、比較的手軽でいつでもでき、費用もかからない方法といえます。
ただ、自筆証書遺言はそれが有効になるための法的要件が厳しいことの他にも重大な欠点があります。
もし遺言者の死亡後にこれが発見されなければ結局相続人は遺産分割協議をしなければならないことになり、被相続人(亡くなった人)の遺志は正確に反映されないことになります。
また、発見されたとしても家庭裁判所での「検認」と呼ばれる証拠保全の手続きが必要になりますので、素早く遺言書の内容を実行に移したい時などは時間と手間がかかって不便です。
さらには、金融機関等、民間の相続手続きにおいては「自筆証書遺言」では受け付けてくれないことがしばしばあります。たとえ民法における要件を満たしていたとしても社内の基準で決まった書類を提出しなければ解約や名義変更ができないということがあるのです。
そのような意味では自筆証書遺言はかなり中途半端で不完全な面が多いといえますので、費用はかかりますがやはり公正証書遺言がベストな選択といえるでしょう。

受遺者(じゅいしゃ)

遺贈における「もらう側」の人。

受贈者

受贈者(じゅぞうしゃ)
贈与により財産をもらう方。